2019年10月18日
課題図書:「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」レフ・トルストイ
今回の課題図書は、ドストエフスキー、ツルゲーネフと並んで、19世紀のロシア文学を代表する文豪レフ・トルストイの作品です。
お久しぶりのロシア文学!
トルストイというと、『アンナ・カレーニナ』『戦争と平和』『復活』などの長編もので知られている大作家。これまでなかなかメンバーの触手が伸びなかったのですが、中身はディープでも、気負いなく読める中編&短編作品もありました!
この本に収められているのは、そんな二篇。
『イワン・イリイチの死(1886年)』は、
不治の病にかかり、心身の苦痛と共に死の恐怖と孤独にさいなまれながら、諦観に達するまでの経過を描いた物語。
『クロイツェル・ソナタ(1987年)』は、
社会的地位のある地主貴族が、嫉妬のため妻を殺めてしまうという内容です。
読書会に参加したほとんどの人が初トルストイという中、こんな感想が次々に挙がりました。
・思った以上に読みやすかった。
・考えが極端で、ひと時代前の価値観。
・どちらのストーリーも、結論が先にわかっているところから始まるのが面白い。
・痒いところに手が届き、言いたいことを文章にしているのが凄い。
・宗教を持っていないと書けない内容。
・当時の女性が持っていたストレスのほどが計り知れない。
・人生の折り返し地点を過ぎたからこそ、自分の”人生のたたみ方”について考えさせられた。
・世界三大悪妻のひとりを妻に持つトルストイだからこそ、物語に出来たのでは?
などなど。
私としては、”男のプライド”たるものが自分自身を苦しめ、このような結末を導いてしまったように思えたのですが。
トルストイがこれらの小説の中で掲げている人間が生きていく普遍的なテーマ「死」「性」「愛」について、メンバーのそれぞれが持つ倫理観や思想などについて深く知ることが出来たのも、大収穫です。
話しが尽きん!
(赤メガネの”ドンファン”M氏が不参加だったのは、残念。)
『クロイツェル・ソナタ』の中でトルストイは、「性的欲望こそ、人間生活のさまざまな悪や不幸、悲劇の根源。」と説いているのですが、
82才で生涯を閉じたトルストイ自身は、実生活では4人を亡くすも9人の子供のお父さんだったというのが興味深いところ。
長きに渡り、人から尊敬や共感される大作家も、やはり思想のまま生きられなかった”人間”だったということなんでしょうか?
ここで、世界の喜劇王のひとりであるチャーリー・チャップリンが遺した言葉をちょっと拝借。
「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ。」はこの本においても言い得て妙。
トルストイの作品は、悲壮的な物語にあるテーマについて考えるだけでなく、違った角度や距離感で読むと、面白おかしく読める本とも言えそうです。
悶々と考えることが好きな私にとっては、秋の夜長に、頭の中でトルストイの思想をぐるぐるさせるのは、クセになりそうな予感。
今回の課題図書も、いつまでも本棚に並べておきたいとっておきの本になりました。
― 文・山川 牧 ―