2017年2月

2017年2月18日
課題図書:「第一阿房列車」内田百閒
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「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う」で始まる
「内田百閒」の「第一阿房列車」。
旅好きにはたまらない一冊を、久しぶりに選書させていただきました。

今回の参加者は、 11 人。課題図書トークに乗り遅れなし!さぁ出発進行!と思ったら。
一人のメンバーから、「ちょっと待ったー!」
「第一阿房列車」と「第三阿房列車」を間違えたそうで。まさかの列車違い??
なるほど表紙を比べてみると、どちらも百閒先生のムンっとした表情のモノクロ写真。
これから読む皆さまも、お乗り間違いのないよう、どうぞ、お気を付けください!

さて、本は、作家の内田百閒先生が、 1950 年から「小説新潮」に連載した紀行文シリーズ。
「阿房列車」の目的は、「鉄道に乗ることそのもの」。還暦を過ぎた先生と、お付き添いの
「ヒマラヤ山系(国鉄雑誌の編集、平山三郎さん)」との珍道中を鮮やかに描いています。

メンバーからは、「鉄チャンは昔からいた」「先生が旅した昭和 27 年という年は、日本の復興の姿を見せてくれる」
「メンドクサイジジィと思いつつ、 2 人の珍道中のユーモアと、途中の車窓風景の描写も素晴らしい」
「映画まあだだよでは、内田百閒先生が主役」「スイッチバックという言葉に故郷長野の列車を思い出した」
「自分自身も本を読むために東海道線に乗ることがあるので親近感」「表紙をみると可愛いおじいちゃん」など、比較的好印象。
一方で、「一緒に旅をしたら疲れそう」「この人のファンだったら面白いのかも」
「本当はできるのにやらない小憎らしさがある」「ぐらぐらしている歯が気になる」など、
実話だけに、先生の人物像への意見も。漱石の弟子としても知られる百閒先生。一筋縄ではいきません。

このシリーズの単行本は、「第一阿房列車」「第二阿房列車」「第三阿房列車」の3冊。
一冊目には、特急「はと」での「東京―大阪」往復列車。「東海道本線」での「東京―静岡」。
そして「鹿児島」と、「東北本線」と「奥羽本線」の旅が、まとめられています。

せっかくなので本の中から、先生の人柄もわかる、笑えるエピソードを(笑)
「国府津駅での乗り遅れ。走れば間に合うのに走らない(P86~)」
「一等車好きの先生。自ら箒を買って自分で椅子をお掃除」「切符を手元に残すために画策(P71)」
「いい部屋に案内されないのは、ヒマラヤ山系さんの古びた鞄のせいにする所(P212)」
「百閒のクイズが気になった(P44~)」というメンバーも。
個人的には、列車の音が、「ちッとやそッとの」と聴こえる音鉄の先生にも胸キュンでした。

寝台特急が次々に減少し、採算が取れない路線が廃止される今。先生は、何を思うでしょう。
それでもやっぱり「無用の汽車旅」は、特別。 さぁ、文庫本片手に、旅へ出よう。