2021年8月

2021年8月16日
第189回課題図書:「地球星人」村田沙耶香

ここ最近、ダイバーシティや多様性という言葉をよく見聞きするようになりました。ユニークさを受け入れるのは素晴らしいことだし、相手の立場になって考えることは大事なことだと教わってきました。金子みすゞさんの詩にあるように「みんなちがって、みんないい」本当にそう思います。とはいえ、誰しも知らないことやわからないことがあるのも事実。そういった知識や認識の空白を埋めていけるのが読書のいいところ。本を読んで旅をするように、本を読むことで脳と心の栄養補給が出来るかもしれません。

さて、今回の課題図書は、クレイジー沙耶香の異名を持つ村田沙耶香さんの「地球星人」
地球にいるのに地球星人?なんとも変わったタイトルだなと思っていたら中身もすごかった。

本書のあらすじは・・・
恋愛や生殖を強制する世間になじめず、ネットで見つけた夫と性行為なしの婚姻生活を送る34歳の奈月。夫とともに田舎の親戚の家を訪れた彼女は、いとこの由宇に再会する。小学生の頃、自らを魔法少女と宇宙人だと信じていた二人は秘密の恋人同士だった。だが大人になった由宇は「地球星人」の常識に洗脳されかけていて……。

ふむふむ。魔法少女に宇宙人か。ファンタジックな物語かと思いながら読み進めていくと、とんでもなかった。
赤メガネのメンバーからの感想は
「びっくりした」
「不気味さを感じた」
「ぶっ飛んでた」
「ヤバイ」
「エキセントリック」
「サイケデリック」
などなど。びっくり仰天な読書体験となった人がほとんどでした。

その中でも、特に印象深かったのは、女性の描かれ方でした。

地球では、若い女は恋愛をしてセックスをするべきで、それをしていないと「寂しくて」「つまらない」「後で後悔をする」青春を送っている、ということにされてしまう。(p221)
らしい。

さらに、
『仲良し』をして、子供を作って、まっとうな人生を歩まないとだめよ (p250)
なのだそう。

本書では、女性は恋愛をして、セックスをして、子供を産むのが「まっとう」らしい。社会が求める役割を果たせないと「まっとう」ではない。地球の期待に応えられない主人公奈月はまるで欠陥品で、読んでいてつらい場面もありました。期待に応えることも大切ですが、自分自身らしく生きることも同じくらい大切なのだと改めて思わされた作品でした。
また、女性の役割についての考え方が二分されていて、笹本姉妹で全く違う考え方をしています。二分されていることで、現代社会において、女性が自分らしく、自分が望むままに生きることがいかに困難かを象徴しているのだと感じました。本書は奈月目線でストーリーが進むので奈月を擁護したくなるのですが、お姉ちゃんの貴世の考え方も決して全悪ではないと思います。女性にしか出来ないことがあるのは事実だし、自分が正しいと思う信念を持ちつつ、他人の意見も冷静に聞ける人間でいたいと思いました。

─ 文・水野 僚子 ─