2023年2月

2023年2月17日
課題図書:「幽霊たち」ポール・オースター著/柴田元幸訳

 登場人物の名前は全て色がつく。
私立探偵をしているブルーの元にホワイトという男からブラックという男を監視してほしいと依頼を受ける。
100ページに渡り、監視をし続ける奇妙な話。
 1年以上も毎日毎日、ただ何かを書き、読んでたまに散歩をしているだけのブラック。
何の為に監視を続けているのか、妄想をしながら孤独になっていくブルー。
恋人とも別れ、さらに孤独になっていき、
ブラックに親近感を感じ次第に一体化していくようになる。
 しかしこの奇妙な状況を打破しようとブルーは捜査を始める。
変装をして直接ブラックと対峙をし、真実を知る。
ブラックは自分の小説を書く為に自分を監視させ、監視報告書を元に小説を書いていた。その小説がこの『幽霊たち』だった。

 読書会で疑問にあがった点を再々読して考えてみた。
 ただ監視をしている何の進展もない話を心情だけで読書を空恐ろしい世界に引きずり込み不思議な感覚に陥らせる、これがポール・オースターの人気の理由なのだと考える。
そして、この本は「行動を起こすこと」がテーマ。
ブルーは状況を変えたく捜査を始め、真実を知った後も話し合う為にブラックを尋ねる。ブラックに拳銃を突きつけられるが逆にをボコボコにして去っていく。
行動したからこそ物語に出てくる「小説」の中から去ることができた。
 マンハッタンの街で再会した恋人が何故あんなに怒ったのか。という疑問もあった。
彼女は1年以上も連絡のないブルーを心配して過ごしていた。
ブルーを吹っ切れて新しい恋人ができた時にふいに元気な様子で声を掛けられ、実は裏切られていたんだ!と思ったのかな…どうでしょう?

 ポール・オースターの魅力がいまいち分からないという意見も出たがイメージとは違う薄暗いニューヨークの街を散歩する様子や映画の話などは楽しめたよう。
 クセになる作家だと思う、ニューヨーク3部作の他2冊も読んでみたいと思う。

─ 文・AZUMI ─