2017年1月

2017年1月6日
課題図書:「日本沈没(上・下)」小松左京
20170106

こんにちは。自他共に認める、赤メガネの会の幽霊部員のえみりです。

そんな私にも、今回、課題図書の「選書」という大役が回ってきました。しかも2017年最初の読書会のための本選び、ということで、仕事(ラジオ番組)以上のプレッシャーを感じならがらも選ばせていただきました。

その本とは、小松左京「日本沈没(上・下)」です。
1973年(昭和48年)に刊行され、約400万部を記録したSF小説。これまでにドラマや映画化もされているので、「知っている!」という方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか?

伊豆のとある島が、突如一夜にして海中に沈んだ。深海潜水艇の操縦者・小野寺は、地球物理学の権威・田所博士と共に調査に向かうが、そこでは、前代未聞の深刻な異変が起こっていた。そして日本各地で、大地震や火山の噴火が続発する…。

結末はご存知の方が多いと思いますが、読んでいない方のために、ホント~にさわりだけのあらすじでお許しください。

文学作品が多い赤メガネの会では、こういった本が課題図書になるのは、珍しいこと。今回は、「文学ではないけれど、日本を代表するSFなので」という理由から選ばれたのですが、メンバーの中には、「楽しすぎて、この本が課題図書で良いの?(笑)」という感想もありました。

楽しかった、面白かった、と同じくらい挙がったのが、「難しかった」「完璧に理解出来なかった」という意見。
小松左京さんが9年の歳月をかけて完成させたこの作品には、地震のメカニズムから日本各地の細かな地名まで、膨大な情報がギッシリと詰まっているため、全てを理解しようとすると大変です。田所博士の言葉を理解しようなんて思ったら、一体何年かかることか!

でも、全ての事柄をここまで詳細に書かれるには、相当勉強されたハズ。自分の作品に対する著者の熱いパワーを感じて、私は心を打たれました。

また、1973年にこの本を書いていたことがすごい。今現在の状況を考えて、改めて読むと、その先見の明に驚かされるという意見も。
と同時に、高度経済成長のイケイケの時代の日本を、小松さんは、客観的に見ていたのかもしれないといった声もありました。

そして「登場人物の描き方が中途半端じゃないか?」という感想も出て、この本のパワーに負けない程の白熱した議論も展開されました。
注:日本沈没には第2部もあるのですが、あくまでこれは日本沈没(上・下)のみでの話です。

この本を読んで、「自分は生き残ろうとする力があるか?その時に何を生き力とするのか?そんなことを考えた」というメンバーもいれば、「いつでも逃げられるようにハイヒールを履かなくなった」という人も(笑)

赤メガネのメンバーは、個性的な人ばかりで、私一人では思いも寄らない感想を聞くことが出来る。本を読む以上に、それが楽しいんだよね♪と感じた2017年最初の読書会でした。


2017年1月27日
課題図書:「グレート・ギャツビー」F・スコット・フィッツジェラルド
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今年2回目の読書会です。課題図書として僕が選んだのは、アメリカ文学の名作「グレート・ギャツビー」の村上春樹翻訳版。
学生の頃に読んだ村上氏の「ノルウェイの森」の会話の中に本作のことが少し登場するんですが、
それがきっかけで、コレはいつか読まなければ、と気になっていました。実は数年前に途中まで読んだのですが、
その時は何故か最後まで読み切れなかったので、赤メガネの会のみんなで語るならば!と選書させていただきました。

今回参加した赤メガネメンバーの中には、これだけの有名な作品なので当然、既に過去の翻訳版を読んでいる人もいて、
ロバート・レッドフォード版の映画から本作に思い入れのある人や、中には「棺桶の中に入れたい1冊(通称:カンイチ)」に
挙げるほど本作を大切な作品と上げる人もいました。
貧しき者がある目的の為に成り上がっていくアメリカンドリーム的な一面や、作品が書かれた1920年代のアメリカンカルチャーのキラキラした雰囲気等、
この作品に内包されているいくつもの魅力的な要素が挙がりました。

一方、今回の読書会で初めて本作を読んだメンバーは、読みやすさや文章の美しさは評価しつつも、ストーリー全体の物足りなさや登場人物への共感のしづらさを指摘。
特にギャツビーの人物像については、彼のデイジーに対する行動を一途さとしてポジティブに読むか、
ややストーカー的なネガティブなものと読むかでとらえ方が大きく違っていました。
また、富豪へと成り上がることのできた彼の「人としての魅力」は一体、どうだったのか?という点も議論になりました。彼にとってはデイジーへの想い以外は、
すべて無価値なものだったのか?彼のあまりの純粋さが、結局のところその悲劇へつながったのか?

もう1つ本作を語る上でポイントとなったのは、村上氏の翻訳についてです。
村上氏は本編後30ページに渡るあとがきでこの作品への想いを語り(彼の出会った重要な作品のベスト1としてこの作品を挙げている)
翻訳家として20年間この作品の翻訳を夢見てきたとのこと。 

赤メガネメンバーの中には、村上春樹テイストを好まない人もいて「アンチだけどしっかり読もう」と意識して読みながらも、やはり共感できなかったようです。
本作がどれだけ村上春樹テイストなのかは個人の感じ方に委ねるしかありませんが、翻訳家として原文のニュアンスを正確に、
そして読みやすく伝えているという点では素晴らしい翻訳である、という意見もありました。僕もそう思います。

最後に今回の赤メガネのハイライト。 ある若きメンバーが本作を読み終わって「あぁこの話、映画化したらいいのに!」と思ったそうです(笑)
近年映画化されたディカプリオ版「華麗なるギャツビー」等と本作が、頭の中でまったく繋がっていなかったようで、何やら凄いことを閃いたような感じでした。
本作が1926年に書かれてから既に5回映画化されていますが、きっと何人もの人がこの物語を読み終わって、こう語ったんじゃないかと思います。
「この物語は素晴らしい。きっといい映画がつくれるぞ、オールド・スポート!」