2024年9月

第239回
2024年9月21日
課題図書『終りに見た街』山田太一著

前回の健資さんが担当された開催レポート。
選書の楽しさ、読書会の様子、本の内容も伝わってきて「こ、この次…私かぁぁあ!!」とワタワタしております。
赤メガネの会、どんな読書会なの?と思ってくださった方はぜひ1つ前の『シラノ・ド・ベルジュラック』の回を読んでみて下さいね!

さて、今回の選書のテーマは『戦争について』

◼︎選書理由
私には今年100歳になったおばあちゃんがいます。そのおばあちゃんに世の中がすごく変わっていく姿をずっと見てきて携帯電話とか色んな便利な物ができたけど、この100年で1番ビックリしたことって何?と質問してみました。

そしたら
『戦争やなぁ』と返ってきました。

よく、祖父や祖母に「戦争のときの話を聞いておけば良かった。」とかそんな話も聞くけれど、おばあちゃんにはやっぱり笑っていてほしいから辛い思い出を引っ張り出すのはイヤだな。とあえてこちらからは聞いていませんでした。ですが、『戦争やなぁ』と返ってきた。

思い出させてしまった。と思いつつ
幼かった頃のおばあちゃんの話しを聞かせてもらえる機会がありました。

そんな事があり、TVでも携帯でもよく”戦争”という言葉が目にとまるようになりました。

そしてふと、自分の本棚を見ると
昭和史(半藤一利さん)の本の帯に『歴史は警鐘する』との文字。

目を背けたくなるような事実が
たった79年前に起こっていて、
知っているようで知らない話。

戦争にまつわる本を読みたい。と
今回『終りに見た街』を読みました。

◼︎–あらすじ–
物に溢れている現代に生きる家族が
突然、戦争の時代にタイムスリップしてしまい、どう生きていくのか。どう立ち向かうのか。
言論統制、食糧不足、空襲の恐怖…

太平洋戦争末期、敗戦へと向かう日本を鮮烈に描きながら驚くべき結末が待ち受ける警告の物語りでした。

◼︎感想
自分が戦争中の時代にタイムスリップしてしまったら…と考えることが恐ろしすぎますよね?

でも教科書や映像で読んだり見たりしている時よりも、もう少し自分に距離を近くして考えられる本でした。

山田太一さんは戦争体験者。
この本は戦争体験者の1人として厳しい体験を次世代に伝えることをテーマに脚本執筆された作品だそうです。

だからこそ、知らなかった戦争中の生活の部分の細かいところも描かれていて、ハッとました。
例えば、国民登録をしていないと配給がもらえないことなど…
(男12歳〜60歳。女12歳〜40歳の国民は国民登録を義務づけられた)

特に怖かったのは、戦争を知らない子どもたちの”思考が染まっていってしまう姿”。

いくら実際に”戦争中、戦後はこうだったんだよ。”と知っている大人が近くにいても、そこで生きていく為に戦争の中で生活している子供たちはどんどん洗脳されていってしまう。という姿がとても恐ろしく、悲しかったです。

『一度戦争が始まってしまったら
どれだけ戦争のことを知っていても
どうしようもできない。』

そんな事を突きつけられた気がしました。

何のために生きているのか。
何故、人間は繰り返すのか。

そんな事を考える一冊でした。

◼︎読書会の感想の中から
「読みやすかった」
「テレビドラマの脚本を書いていた山田太一さんの作品だから最後まで誰も置いていかれずに読める作品」
「SF作品として読んでしまうと気になってしまう所が多々出てくるから、どうして人間は戦争を繰り返すのかの視点で読んだ方がいいと思った」
「人間の抗いようのない愚かさを感じた」
「こんな終わりになるのとビックリした」
「戦争ってこういうことなんだなということを一人ひとりが知るのにいい本」
「徹底的に戦争ってこういうものなんだ。ということを残酷なまでに描いていて生々しく感じた」
「生活も大変なのに手に入れたい珍しい品物を買ってしまうなど、どこか人間らしい生活を維持しようとする人の姿に不条理さとしぶとさを感じた」
「今の生活と戦時中を主人公を通してどれだけ違うのかということをすごくわかりやすく描いている」
「まさかこんな最後はなかろうとすごく傷ついた。きっとこの読後のショックを残しておいてほしいんだろうなと思った」
「警鐘をならしている本だった」
「なぜ?が解決されていない所が多かった」
「読んでよかったけどすごく落ち込んだ」

そしてドキっとした感想が、
「戦争を知らない(経験していない)のはかえっていいことなんじゃないの?」という感想。
「日々意味もなく命が奪われている国もある。現代でも戦争をしている国があるなかで、こんなに生々しく描かれてしまうと、知らないことが自分の中で悪いことなんじゃないかと思いはじめてしまった。
今、物が溢れていて、好きな情報を自由にとりにいけて、便利に生きている自分がすごく悪く感じてしまって辛かった。」
「読むべき本だと思うけど、人へのすすめ方を考えなきゃいけない」

この感想を聞いて、読んだ人が辛くなってしまう可能性がある本だということもわかっていないといけないなと思いハッとしました。

そんな事にも気付かせてくれる赤メガネの会。

より深くこの本のこと、人のことを考える時間になり充実な時間になりました。

私はこの本を読んだあと…

辛い事があって、もう何もかもやる気が起きなくて、なんとか。なんとか動かな。って思ってるときがあったのですが、蕎麦屋の定食頼んで、カツ丼のご飯を口いっぱいにつめこんだ時に
“あ。当たり前じゃない。”て気付かせてくれたのが、この本でした。

この本を読んでたから
パッと視点が変わり、今できる事やろう。て思え、心救われました。

心が元気なときに読むのがいいかもしれません。

― 文・宮崎 夢子 ―