第234回
2024年5月15日
課題図書「人生の短さについて 他2篇」ルキウス・アンナエウス・セネカ著 中澤務訳
選書担当の私が拠点を京都に戻すというのを機に選んだ1冊。
著者のルキウス・アンナエウス・セネカは、史実上の人物。(以下セネカの表記)
約2000年前、ストア学派の哲学者であり劇作家、さらにローマ皇帝とも関わり、栄華を極めた政治家だった。
非常に弁論にも優れ、それがために皇帝に嫉妬されて、殺されかけたこともあったという。そして、様々な切り口から「生き方」について考え、言葉として残した。
この本にはそんな彼の言葉が3つ収められている。その中から、多忙を極める近親者パウリヌスにあてて綴られた表題作『人生の短さについて』を赤メガネのメンバーと話したら、こんな感想がもらえた。
・現代にも通じるもので、多忙な毎日を送ることを見直すべきではないか?
・普通に生きているとノイズに消されて見失っていた大事なことが書かれていた。
・時間の使い方を再考し、しっかり先を見据えて計画して生きていきたい。
・とてもわかりやすく実践的な教えで我に返った。
・約2000年も前に書かれたと思えない普遍性がある。古代ローマ人は凄すぎる!
・人を誘って会うことは、その人の時間を奪うことになるという認識がなかった。
などなど。
この本は、早く時間が過ぎてしまうからこう生きなさいという指南本ではなく、時間を無駄にしているから人生が短く感じるのだと説いている。
時間をどのように使うかによって、その長さが決まると。
さらにセネカは、その時間を知恵や哲学を追求して、自己成長や有意義な活動に時間を費やすことで人生がより充実し、満足感を得られると語っている。
さまざまな形で時間を節約できるようになったはずの現代人の私たちは、節約したはずの時間をまた別の形で費やし、ますます多忙になっていたりする。
時間のリズムが加速した生活を送る私たちが、本当の意味で人生の時間を充実させるために必要なものは何なのか?と、セネカの言葉から考えさせられることになった。
メンバーが口を揃えて、手元に置いておきたいと言ったこの本。私のこれからの生き方にも影響を与えてくれる1冊となるだろう。
― 文・山川 牧 ―